自分の大切なものを、大切にしたいブログ。

現在名古屋大学文学部社会学科3年生で、コペンハーゲン大学に留学中です。

日本に「転職」という選択肢を。 ②転職活性化に向けて取り組みたいこと

読者の皆様へ

こんばんは。ふみひろです。日本で僕の通っている大学のある名古屋市では、もう桜が咲いているらしいです。しかしコペンハーゲンで暮らしていては、そんな感じが全くしません。

今日の最高気温は2度で、最低気温は-1度です(笑)

もうすぐ4月ですよ。なぜここまで冬が長いのか、もはや怪奇現象ですね。

今日はそんな冬が長いデンマークという国で、日本の転職活性化に向けたヒントを得よう!と勝手に考えて、今取り組んでいることを紹介したいと思います。

前回の記事では、日本で転職を活性化することの意義について書きました。その記事はこちらです。

yamafumithat2.hatenablog.com

そこで今回の記事では、どうしたら転職が増えるだろうかということを、一学生が頭をフル回転させて考えた方法を書いていきたいと思います。意見等ありましたら、お待ちしております。

今回知ってほしいことは、

①日本とデンマークの「働き方」の違い

デンマークから、転職に関してどのようなインスピレーションが得られるか

この2点です。では、記事を書いていきたいと思います。

 

1.日本とデンマークの働き方

まず初めに、日本とデンマークでの働き方を紹介したいと思います。これはあくまで「モデル」であって、全員がこの働き方に当てはまるとは限らないことに留意してください。

日本の働き方は、前回記事にさせていただきました。

yamafumithat2.hatenablog.com

要するに、一つの企業に長く務めるモデルですね。

では、デンマークはどのような働き方でしょうか。2個前の記事でも紹介させていただきましたが、重要なのでもう一度説明させていただきます。

デンマークの働き方は、「フレキシキュリティ」に代表されると思います。

フレキシキュリティという語は、「Flexible(柔軟性)」と「Security(安心・安全)」という語を組み合わせたものです。「Flexible」は労働移動の柔軟性、つまり企業は労働者を解雇したり、雇ったりするのが簡単です。そんな簡単にクビを切られては労働者も困りますので、失業している2年間は前職の90%ほどの収入を失業保険で保障され、その間ジョブセンターでの求職活動や職業訓練に従事してスキルを磨きます。つまり「Security」がある、いざという時も安心して生活できる構造になっています。こうして次の就労への準備をし、実際に新たな職場で雇われていきます。

つまり、日本が一つの企業に長く務めるのに対し、デンマークでは企業を転々としながらキャリアを積んでいきます。デンマークでは転職が盛んであることを意味しますね。

 

2.転職を活性化させるための2つの方法

僕は前回の記事では、転職という選択肢を増やすことの意義について述べました。だから、デンマークの転職盛んなモデルを日本に輸入すればいいではないか、と考えられるかもしれません。しかし、このような仕組みのデンマークのキャリア観をそのまま日本に導入して転職を活性化させよう!と考えても無理です。実際、フランスでは、デンマークモデルを導入しようとして失敗しました。フランスも日本同様、比較的一つの企業に長い間務めるモデルです。このような国でフレキシキュリティを導入すると、実は労働者から強い反発を食らいます。なぜなら、フランスでは労働者が重点を置いている価値として、「雇用を安定的なものにしたい」と考える人が多いからです。つまり、デンマークのように解雇しやすい環境では、同じ会社に長い間務めるという保証を得られません。それを嫌ったのです。ずっと安定して働きたい、そうすれば家族も安定して養っていける。このような価値観が勝っているのです。だから日本のように、安定して同じ会社で働き続けたいと考え、年功賃金の恩恵でずっと同じ場所に留まり続けることが有利な環境にデンマークモデルをそのまま導入しても、フランスで失敗したのと同じ現象が起きます。

では方法はないのかというと、そうでもないと思います。転職を活性化させるためには、僕自身大きく分けて2つのアプローチがあるのではないかと考えました。もちろん、他にもアプローチがあると思いますが、デンマークからインスピレーションを得ることができる部分という意味で、以下の2つにフォーカスします。

 

1.企業にとって魅力的な人材を増やす

まあ当たり前ですね。企業が雇いたいと思う人材がその企業に応募すれば、採用される確率は高いですよね。そんなこと口で言うのは簡単ですが、じゃあ実際どうすれば企業にとって魅力的な人材が増えるのかという話になります。

そこで僕が着目したのは職業訓練です。上記デンマークモデルを見てもわかるように、職業訓練が次の就労へのカギとなっています。2005年には、デンマークの人口541万人中,61万7000 人がAMU職業訓練センターのコースを受講しています。つまり、ジョブトレーニングがかなり多くの人口に提供されているのです。そこで、デンマーク職業訓練の内容と、訓練で向上したスキルがどの程度転職活動に、また転職後の職に貢献しているかというポイントを調査したいと思います。トレーニングには、ジェネラルなスキル(例えば、プログラミングの使い方など)にフォーカスしたものと、実践型のもの(例えば、実際にインターンシップという形で、企業で業務をこなして経験を積む)があります。日本においても職業訓練は行われていますが、規模が違います。これを日本においてどの程度導入できるかを、実際にデンマークで調査を行っていきたいと思います。帰国後は、日本の職業訓練などの取り組みも実際に調査し、デンマークのものと擦り合わせていきたいと考えています。

こうして労働者がスキルを向上させ、就労に結びつく環境が整うならば、企業にとっても転職によって人材を獲得しようという気になります。これがうまくいけば、企業も中途採用にさらに注目するようになるのではないかと勝手に考えています。

2. マッチング機能を高める

突然ですが、みなさんAirbnbはご存知でしょうか。このサイトでは、利用者は地域や部屋の大きさを選択し、多様なプランやホストの評価を参考にしながら、自分に最適な宿を見つけて予約を申請します。ホストも今までのゲストの評価や希望日時を参考にして、ゲストを受け入れるか決定します。いわば、2人の利害が一致した時、この契約は成立します。これが「マッチングサービス」です。

これは転職にも同じことが言えます。転職希望者と受け入れ企業側で利害が一致すれば、転職は成立します。そのいわばマッチング機能を高めるには、マッチングの「量と質」を高めることが大事であると考えます。

「量」は、要するに転職希望者がより多くの企業を、受け入れを希望する企業がより多くの転職希望者を把握するようなシステムです。選択肢が増えれば増えるほど、双方の利害が一致する確率は増え、転職に結びつきやすいと思います。

「質」は、転職希望者と企業が、より欲しい情報を効率よく提供することです。ただ量を拡大するだけでは、互いに大きな労力を割いてしまいます。できるだけ集約された情報であれば、そのように時間をかけずにマッチングさせることができます。

この機能を担っているのは、広告、転職情報サイトなど色々ありますが、デンマークで着目したいのは「公共職業安定所(日本でいうハローワーク)」です。

一般的に、高度なスキルを持つ人材は、民間の転職エージェントを使って転職します。このエージェントを使うと、報酬が高いので、そこまで収入を持っていない人には使いづらいです。しかし、公共職業安定所は万人に開かれており、無料で利用できます。その公共性から情報やサービスの質などが懸念されますが、職業安定所の職務はマッチングだけでなく、実際に面談を行い、これからの就労に向けた計画立案を支援したりすることもあります。

デンマークでは、転職が盛んであり、公共職業安定所の職務も必然的に重要になってきます、そこで全労働者のマッチングに向けて、どのような取り組みが行われているのか。またそのような機能を日本にも輸入することが可能か、などを研究することで、日本の全労働者に対するマッチングの「量と質」の向上が可能になるのではないかと考えています。

 

以上が転職活性化に向けた2つのポイントで、これからデンマークで研究したいと思っていることです。しかし、懸念が一つあります。それは、4月に公務員のストライキが起こるかおしれないということです。何でも昼食代をタダにしろ、というので起こすそうです。

「おいおい勘弁してくれよ」

というのが本音です。日本だと公務員のストライキは法律で禁止されていることを考えると、デンマークの労働者の権利は強いです。なのですごくおもしろいなとは思うんですが、4月に関係各所をまわってインタビューしたいなと考えていた僕にはショックです。生活も不便になりますし。

まあそれは置いといて、今回の記事では、日本に転職という選択肢を増やすために僕が今やりたいと考えていることについて書きました。ポイントは、①企業にとって魅力的な人材を増やすというのと、②マッチング機能を高めるということです。英語にも少し慣れてきたので、これからどんどん活動して、インタビューしていきたいと考えています。

それではまたお会いしましょう。

ふみひろ

 

参考文献

樋口美雄、児玉俊洋、阿部正浩他(2005)『労働市場設計の経済分析』東洋経済

ロベールボワイエ(2016)『作られた不平等』藤原書房

藤川恵子(2008)「日本版フレクシキュリティ構築への課題 ―転職と多様な働き方を支援する労働市場政策―」『Works Review Vol.3』pp.1/14~14/14 リクルート研究所 https://www.works-i.com/pdf/r_000077.pdf