コペンハーゲン大学に留学する理由
読者の方へ
ふみひろです。コペンハーゲン大学に留学して、7か月半が経ちました。今回は、コペンハーゲン大学、つまり、デンマークに留学する理由を書きたいと思います。
今回の記事の目的は、
①僕がコペンハーゲン大学に留学している理由をより知ってもらいたい。
②これから留学する人、特に志望動機で悩んでいる人に対して、少しでも参考になる部分があれば良いなと思う。
③こんなに適当な僕でも何とかなったから、皆安心して!大丈夫!
の3点です。
志望動機を作るのは大変ですが、重要です。そこで、一個人の例として、参考にしていただければと思います。
それでは、書いていきたいと思います。
まず、僕は中学、高校の時から「留学したい」と思っていました。そこに深い理由はありません。ただ、「今とは違う生活してみたい」「自由に暮らしたい」「海外経験は必ず人生の役に立つ」というぼんやりとしたものでした。
そこで、大学を選ぶ際も、国際系の学部に生きたいと思っていましたが、名古屋大学の文学部という、国際とはあまり関係ない学部に入りました。その経緯については前の記事を参照ください。
さて、こうして名古屋大学に入学したわけですが、正直一年の時、留学は何も準備していませんでした笑
「まあ、3年生の秋から留学したいから、もうちょい後で準備すればいいか。」
こんな感じです。
で、2年生の4月時に、3年生の秋からで留学したいなら、2年生の10月ごろに英語のテストの点数を提出し、留学の志望動機を決めないといけないと知りました。えっ、早く準備しないと、と焦りました。
勝手な思い込みにより、情報収集をしていなかったことがあだになりました。
で、4月から準備を始めます。それまでスピーキングは一切取り組んだことがありませんでした。まあ英会話教室に週一回通い、瞬間英作文を始めたわけです。今回は留学志望動機についてフォーカスするので、また語学学習については後ほど記事に書ければと思います。
そこで、僕はどこの国に行きたいのか?考えました。最初出た答えは、
「オーストラリア」
でした。なぜかと言えば、治安もいいと聞いていたし、グレートバリアリーフや野生の動物など、自然豊かで楽しそう!と、あこがれていたわけです。
その願望は夏まで続きましたが、何が問題だったかというと、
「やりたいことないなー」
です。オーストラリアに行って特別「これをやりたい」というのがあまりなかったのです。
社会学をやっていたので、先住民に関しての切り口から志望動機作れるんじゃないかと思ってましたが、どうも自分が納得できるものが作れませんでした。
そこで、夏になってまた交換留学先を見て、考え直します。何が目に飛びついたというと、
「ミネソタ、シンシナティ、フロリダあるじゃん!」
です。もしかしたら気づいてる人はいるかもしれません。そこで、それで何を考えたかというと、
「アメリカ行けば、メジャーリーグみながら英語も練習できるじゃん」
です。ミネソタはツインズ、シンシナティはレッズ、フロリダはマーリンズの本拠地です。いやー、僕の思考は実に単純ですね!神戸大学行きたい理由は「甲子園あるから!」、アメリカ行きたい理由は「メジャーあるから!」と。
けど、今回はそれだけじゃありません。アメリカは社会学の総本山の一つ、数多くの面白い研究が出ていると理解していたので、それはアカデミックな理由にもつながると思ったのです。そのころ、不平等について興味があり、アメリカの人種差別の研究はどうなっているのかという切り口で行こうとしました。
これで完璧です!不純な動機も、アカデミックな理由でカバーできます。「やっぱアメリカ行くしかないっしょ。」そんな感じの思い込みで凝り固まっていました。そこでアメリカ以外の志望校を調べるのはやめました。締め切りの10日前くらいに志望大学をがらりと変えるとも知らずに。
こうして、IELTSも留学受け入れギリギリの点数を取り、点数と相談しながら、シンシナティにでもしようかなと考えていました。授業に関しても、まあまあ社会学の授業は充実していたので、それで人種とか、国際開発とか勉強したいと、そういう形で応募しようとしていました。
しかし、人生何が起きるかわかりません。その頃の僕に「お前一年後デンマーク行ってるよ」と言われても、多分信じなかったと思います。
人生の転機は基礎セミナーという授業で訪れます。この授業は本来1年生で単位を取り終えているはずですが、めんどくさかったため、2年生で取ることにしました。なので、周りほとんど1年生です。
どういう授業だったかというと、簡単に言えば「留学についてもっと知って、準備しよう」というものでした。
そこで、交換留学の協定先の大学について1人1校調べてきて、プレゼンするという回がありました。僕は、アメリカのシンシナティに行きたいと教授に行っていたので、シンシナティ大学が割り振られ、プレゼンを行いました。
その回では、いろんな国の大学について生徒が発表していました。アメリカと決めていた僕だったので、そのプレゼンも自分の留学先を選ぶために聞く、という意識で聞いていませんでした。
聞いている中で、「オスロ大学」というのがありました。最初聞いた時、「オスロ大学かー、寒そうだな―」と感じただけでした。しかし、冷静になって、ふと思いつきます。
「待って、北欧良いんじゃないか!!!」
今まで見向きもしませんでした。その頃、僕は調査実習で「ワークライフバランス」について取り組んでいたので、北欧について微妙に魅かれていました。こんなシステムの国があったらいいな、みたいに、僕のユートピア的な感じで思ってました。北欧なら、長時間労働とか、自殺とかのない世の中になるのに、と感じていました。
そこで考えを改めます。アメリカに行くより、そういう国で暮らしてみる方が絶対いい経験になると感じました。
さて、家に帰ってリストを見直します。協定校の北欧の大学の中で、一番惹かれたのが、
コペンハーゲン大学
です。その理由はいたって単純。なぜかというと、
「デンマークって、北欧でも南の方だから、そんなに寒くなさそう!」
です。僕は今北欧に来ているのに、寒いのがめちゃくちゃ嫌いです。夏の方がまだましだと思っています。なので、寒さのマシな南にあるコペンハーゲン大学が良いと思いました。その時は、「北欧ならどこも似たり寄ったりじゃん、なら一番暖かいところ行こうよ」と思っていたのです。
さて、デンマークについて調べます。日本にはない面白い制度がたくさん見つかります。しかし、他の北欧の国の協定校と差別化ができません。たとえば教育無償とか、医療費タダとかは、他の北欧諸国でも一緒なのです。しかし、寒い場所にはいきたくありません。
困ったのでゼミの教授の下に相談に行きます。デンマークに行きたいと思い始めたのは、提出書類の締め切りたった10日前だったので、焦ってました。それでもよく教えてくださりました。国際比較の専門家なので、デンマークについてもよく知っていました。デンマークなら、「フレキシキュリティ」について書いたらどうかと勧められました。
フレキシキュリティとは、「ゴールデントライアングル」とも称される (1) フレキシブルな労働市場、 (2) 失業者に対して手厚い給付を行う失業保険制度等[5]、(3) 失業者の技能向上を目的とした職業訓練を伴う積極的労働市場政策の3つの密接な相互連携からなるデンマーク特有の体制の下での「雇用の保証(employment security;同一企業内の雇用保証ではなく、職業訓練など活性化施策と密接に関連した手厚い失業給付を基盤とした切れ目のない雇用の場の確保)」を指す。(www.jil.go.jp/column/bn/colum072.html)
長ったらしいし、分かりにくいので、かみ砕いて説明します。要は、解雇規制が緩く、経営陣は労働者を解雇しやすいが、失業した人は豊富な失業手当を受けながら、職業訓練でスキルアップすることで、またほかの企業に雇ってもらえる、という仕組みです。これをすると、経営陣は必要な分の雇用量を考えればいいから、必要なくなったらクビにすれば良い、ということができます。例えば、AI化でライン作業みたいなのに人がいらなくなったら、クビを切れるのです。そこで労働者は失業しても、失業手当で生計にしばらくは困りません。そして、職業訓練して、例えばコンピュータースキルを身に着ければ、コンピューター関連の仕事をゲットできるチャンスが増えます。そうして次の就労に結びつけば、労働者自身キャリアアップにつながります。多くの雇用を必要としている、付加価値の大きい成長部門に雇われるからです。付加価値の大きい人材には、それなりの報酬が払われます。例えば、今の情報化社会なら、コンピュータースキルをもった人材が人気です。こうして労働市場全体でみれば、「要らない部門を削って、必要な部門に人材を移動させている」、つまり衰退部門から、成長部門への人員シフトです。そのため付加価値が高まり、経済成長を遂げていきます。
つまり、このモデルでは、「労働者も、企業も、国もある程度の恩恵を受けている」という構造になります。労働者は、解雇されやすいが、失業手当で生活が保障される。企業は人材の「適材適所」が可能になる。国としては経済が成長し、国力が高まる。
これを知った時、
「こんな面白い仕組みがあるのか」
とすごく感激しました。そのころまで、国の経済成長にフォーカスするなら、アメリカみたいな政府がほとんど介入しない自由主義、皆平等に暮らしたいなら北欧みたいに福祉最強国家、と考えていて、「自由」と「平等」は両立不可能ではないかと思っていました。
しかし、この常識は崩れました。「二兎を追う者は一兎をも得ず」と考えていた僕には衝撃でした。そこで、アメリカ留学は完全に頭の中から消え去り、「デンマーク行こう!」と思ったのです。
志望理由では、「デンマークでフレキシキュリティを研究したい!」と書きました。しかし、次なる口頭面接でこう聞かれたら終わりだなと思いました。
「フレキシキュリティについて研究したところで、何になるの?」
この問いには二つの意味があります。
①日本とデンマークでは国の制度が違うから、それを学んだところで、日本に生かせないじゃん。というものと、
②フレキシキュリティについてやったら、今後あなたの人生何か変わりますか?という意味です。
まあこう来たら困りますね。「別に留学なんだから、やりたいことやらせてくれよ」と嘆きたくなります。自分の将来につなげるのとか難しいじゃん、と思ったわけです。
しかし、選考で勝たなければいけないので、こういうのも回避しなければいけません。留学行きたい方にとって、僕の考え方を参考にしてもらえるとうれしいです。要は自分で突っ込みを入れるのです。「なぜ?」「意義は?」「どうやってやるの?」こうして自分の考えをブラッシュアップしていきます。
まず、①に関して、僕は考えました。フレキシキュリティのキーワードは、簡単にまとめると「解雇されやすいが、中途採用で雇われやすい」「手厚い失業手当」「職業訓練」です。最初の二つは厳しいと思いました。解雇要件に関して、もし無期限の雇用を確実に保証してくれている今の日本の社会で労働者を「いつでも解雇できます!」と言ったら、社会はどうなるだろう。想像しただけで無理だと思いました。失業手当は、ただでさえ社会保障関係費のかさばっている日本で、これ以上失業手当に費やすことはできません。そこで残ったのが「職業訓練」です。
日本で公共の職業訓練とかは、あまり聞いたことがありませんでした。一応ありますが、デンマークとは規模が違います。日本はOJTで企業が労働者のスキルアップの担い手だからです。
しかし、この職業訓練を日本の民間でもっと応用することができるのではないかと考えました。公共の職業訓練だと、訓練を国がすべて負担しなければなりませんが、民間でやれば、民間に対するインセンティブだけで済みます。また、日本の人材育成の担い手は企業なので、企業はそういった部分でのノウハウを蓄積しています。そして、失業者であろうが、ほかの会社に雇用されていようが、これを民間の企業で行えるようにすれば、労働者にとってさらなる可能性が増えます。そして、訓練を担う企業も、インセンティブをもらえますし、新しいビジネスの可能性になるかもしれません。さらに、そういった「インターン」的なところから、人材発掘につながるかもしれません。
これだ!と思いました。これをデンマークでもっと調べて、応用できる部分があれば日本でも生きてくる、と。
しかし、②それが自分の人生の何になるの?という問題が残っています。
そこで、もう無理やりでっち上げました!(留学センターの方には内緒でお願いしますね。)つまり、こういう民間企業で人材育成を行えるように、市役所や県庁、もしくは厚労省で働きたいと。そうすることで、人材交流が盛んになり、それが新たな価値を生み出すと、力説しようと考えました。
これで解決です。あとは、堂々と質問に答えました。しっかり準備したおかげで、あまり緊張もしなかったです。
そして、晴れてコペンハーゲン大学行きが決定しました。
人生何が起きるかわかりません。大事なことは、あらゆる可能性に耳を傾けることだなと実感しました。そんな可能性はない、と思いこんでいても、実はそれが自分の本当にやりたいことだったりします。デンマーク行きを決めたのは、書類の締め切りたった10日前でしたが、上手くいき、今デンマークにいます。
そして実際僕はデンマークの労働市場にすごく興味を持ち、それを日本に還元したいと、今は心の底から思っています。また、そのことについては記事にしたいと思います。
文章長くなってしまいましたが、ここで終わりたいと思います!それでは、またお会いしましょう!
ふみひろ